toppic
Name
LiliumU
Data
2016/09/26
MAKING
Making
製作記録
scw scw scw scw scw scw scw scw scw scw scw scw scw scw scw scw scw scw
ぼくのかんがえたさいきょうのりかんべんと。

 LiliumTではとにかく乗ってみたいリカンベントをカーボンで作ってみる, が第一にやりたかったことでした。

 LiliumUでは,前のLiliumTで製作技術そのものは確立してきたので,次は乗りやすさ,走り易さのための設計を煮詰めて製作を進めました。

 「ロードバイクよりちょっとだけ速く,ちょっとだけ遠くへ,ちょっとだけ楽に走る。」

これが,このLiliumUの設計コンセプトです。

設計思想。

 この項を読む前に,LiliumTの項目から読んで貰ったほうが理解しやすいと思います。

 リカンベントと言うと速さを求めている乗り物と思われている節がありますが, 実際は全く違っています,この乗り物の最大のメリットは,

「楽に走ることが出来る」

なのです。

 リカンベントの最大の利点は, 前方投影面積が小さいので空気抵抗が低く,楽に走れ, 乗車姿勢では上半身を使わないので疲れない。 疲弊しても顔が下を向くことは無く,視界が広い。

 であるため,とにかく長く楽に走ることが出来るのです。 勿論速く走ることは出来ますが,決してそれだけじゃないんです。

 で,それを出来るだけ自分用に煮詰めて設計したのがこのLiliumUです。

 求めた性能要求を書き出してみると,

1. 姿勢に無理が無く,体を起こし地面を蹴って進める座高であること。

2. 1.の事項を求めるが,姿勢は出来るだけ寝かせること。

3. BBハイトは出来るだけ高くし,視界の邪魔にならない程度にすること。

4. 通常の街乗りで無理の無いような車高と着座姿勢にすること。

5. 脚力を最大限に使えるポジションが出ること。

6. 一車線道路(3〜4m幅)でUターンできる程度の旋回半径に抑えること。

7. 直進安定性は出来るだけ高めること。(手放しさえ出来る程度に)

 以上の要求から見てもわかるとおり,高速性能では無く, 何気なく乗って速く遠く走れる車両になるよう設計しています。

 さらにフレームに求めた設計要求は,

1. LiliumTよりも横剛性を高めること。(最重要項目)

2. フロントブレーキにキャリパーブレーキが取り付けられるよう,
  クリアランスを大きく取ること。(最重要項目)

3. チェーンラインの屈曲箇所が一箇所になるよう設計すること。
  (重要項目)

4. アイドラーは出来るだけ巨大化させること。

5. ケーブル類の取り回しを最適化させること。

6. チェーンマネジメントが適切になるようネジ穴位置を工夫すること。

 以上の複数項目です。

 まず最重要項目として挙げている通り,横剛性の強化を目指しました。 LiliumTでは,細めのパイプによるトラスのような構造の設計をしましたが,横方向の幅が不足していたため,フレーム全体がチェーンに引かれて撓んでいました。これぱかりは横方向に幅を増やすしか対策しようがないので,メインパイプ径を60φまで拡大することでクリアしています。

 また,メインパイプを単管構造にすることで,フロントフォーク前後のクリアランスを大きく取ることができ,効きの良いキャリパーブレーキを取り付けることもできるようになりました。

 一方,パイプが単管パイプ構造となったため,フレーム全体の縦幅が若干不足します。なので,メインパイプ内部に補強板を入れ,縦方向の剛性を確保しています。また,その補強板の内部にワイヤー類を内蔵することで,ワイヤー用のパイプを改めて仕込む必要をなくし,製作時の手間を省けるようにしています。

 他には,ラグに大きなフィレットを設けて強度を上げたり,強度が必要な部分はラグで広く覆って補強板代わりにしてみたりと,細かい工夫を詰め込みました。

製作時に気にしたこと。

 設計もですが,製作もいろいろと気にしながら作った部分があります。 今回は出来るだけ製作を楽にしようと,3Dプリンターで出力してもらったナイロン製の型を使ってカーボンラグを製作しています。また,当然精度良く出力されるので,フレームの精度も上がりました。

 他には,ねじ穴の断面にはアルミ板を貼り付け,ネジ止めによる局所的な圧縮を防ぐようにしてみたり,スタンド用のネジ穴を設けてみたりと,いろいろと詰め込みたいことをめい一杯詰め込んで製作しています。

実際の製作では。

 今回の製作に当たって,ジグ用の定盤を新しく作りました。赤松集積材の分厚い板を製材して,箱型に組んだ物です。非常に強度があり,歪みのない平らな面を作ることが出来,その上でジグを構成することで,歪みのないフレームをつくることが出来ました。

 また,製作法や色々な部分もLiliumTのフィードバックを受けて随分丁寧に作り上げることが出来ました。

手作り出来る高性能なフレーム。

 LiliumTからたくさんのフィードバックを加えて作ったLiliumUですが,自分の使い方にはぴったり当てはまる非常に優秀なフレームになりました。 後は耐久度で,どれくらい長く乗れるかがネックになってまます。目標は5000kmです。そこまで行けばいいかなぁと。 ちなみに私自身はこのフレームで満足しているわけじゃなく,もう少し改良したい所があるので,そこは次のLiliumVにフィードバックしたいと思います。

 走行性能や走ってみた感じについては,左メニューのBicycleから,

LiliumU

の項目をご覧ください。

 あわせて,関西地方に在住のベントライダーである もるとんさん の 試乗レポートもあります。

SteadyCat.Works. LiliumU(前編)

SteadyCat.Works. LiliumU(後編)

 LiliumUの設計意図を明確に理解し,記事にしていただいています。

 というわけで,何か書き足したいことがあればまた書きたいと思います。